今回は「人材業界の未来シナリオ」という本を読んだので、概要と僕なりの考察をしていきたいなと思います。
概要
全てを載せることは出来ないので、一部を要約してお伝えしたいと思います。
①リクルーティングビジネスの新潮流

・リクルーティングビジネスにおける空白地帯
これまでのリクルーティングビジネスモデルは大きく分けて2つに分かれます。
□求人広告→例:リクナビ、マイナビ
□人材紹介→例:DODA、(スカウト型、セグメント・業界特化型、総合型を含む)
実はリクルーティングビジネスにおいて、直近20年間、二大ビジネスモデルが大きく変化することはありませんでした。外部環境が過去20年間で劇的に変わっているのにも関わらず、低価格化を進める競争戦略論の1つである「コストリーダーシップ」が行われてこなかったのです。
その背景としては、商材が「人材」というという所が考えられます。
採用においては、採用費が安いからといって誰でも採用しようとはなりません。
低価格競争をしてもある程度一定のクオリティが必要になることから、人材紹介を扱っている企業(特にリクルートやパーソル等)は価格ではなく、サービスの質に特化して成長してきました。
よって、求人広告の前課金型と、人材紹介の成果報酬型の両方の側面において、低価格化があまり進んでいない状況でした。
・ソーシャルリクルーティング
先ほどお話した空白地帯に参入してきたのがソーシャルリクルーティングです。
ソーシャルリクルーティングには大きく分けて2つのモデルがあります。
□Wantedlyを代表とするSNS拡散型求人PRサイト

SNS拡散型求人PRサイトは求人広告型の低価格化を実現したビジネスモデルであり、以下のような特徴があります。
・リーチする層が転職を考えている転職顕在層に加え、転職潜在層であること
・社風が表現しやすく、ビジョン等で会社を選べる点
・ただし、PRとしてのプラットフォームなので、給料や福利厚生などの条件の記載はNG
・費用対効果が高い
以上の特徴から、SNS拡散型求人PRサイトは他のビジネスモデルと同じパイを争うのではなく、既存の他ビジネスモデルとの併用が出来るのが強みです。
□LinkedInを代表とするビジネスSNS

このビジネスモデルは、簡単に言うと潜在転職者層へのスカウトをメインに行います。
企業が直接ビジネスSNSを介してターゲットになる人材にアプローチし、コンタクトを取り、採用に繋げていきます。また、前課金によってアプローチすることも可能です。
このビジネスモデルの特徴は、転職潜在層に能動的にスカウトが出来るという点です。
しかし、日本の雇用習慣的に、転職をまだ考えていない人が経歴をオープンにするのはある一定そうに限られているので、日本での浸透には時間がかかる印象です。
しかし2016年にマイクロソフトがLinkedInを買収したこともあり、今後伸び得るビジネスであることは間違いないです。
その他OpenWorkやNewsPicksもソーシャルリクルーティングに該当しますが、いずれにおいても共通しているのは、
「これから転職を考える潜在層にアプローチしている」という所です。
・大手企業の次世代戦略
リクルートキャリア、パーソルキャリア、エン・ジャパンの人材紹介における大手3社を比較したところ、手段は違えど方向性としては以下に共通しています。
□求人企業サイドの接点強化を目指した戦略展開
→日本国内に限定したメディアや集客戦略が飽和点を迎える中で、国内の大手人材会社にとっては、求人企業との関係性構築が基幹戦略になります。
2020年代前半に市場が変化するのには、どのようなアプローチで求人企業との接点を持ち、強化するかがカギとなってきます。
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②人材業界ディスラプター

・アグリケーション型求人検索エンジンの参入
低価格のビジネスモデルとして参入してきたのが先ほど説明したソーシャルリクルーティングでした。また、近年では「アグリケーション型求人検索エンジン」も低価格の人材ビジネスモデルとして参入しつつあります。
アグリケーションは「集約する」という意味で、インターネット上にある求人情報をクローリングという技術で集約し、ワンストップで求人情報を見られるようにしたサイトの事を指します。
日本では今CMで話題のindeedがこのビジネスモデルを取っております。
□indeedを代表するアグリケーション型求人検索エンジン

アグリケーション型求人検索エンジンの特徴としては、求人情報をクローリングすることによって、ワンストップで求人情報を提供できる点にあります。
また、従来の求人広告サイトは企業目線で作られているのが多いのに対して、アグリケーション型求人検索エンジンでは求職者目線で作られています。
また、indeedに関しては独自のSEO技術を持っており、仕事を探そうとした際にindeedのリンクが上位表示されるようになっています。そのリンクをクリックすることで、ワンストップでの求人検索が可能になります。
indeedでは以上のビジネスモデルから「楽に」「安く」転職顕在層にアプローチすることが出来ます。
・indeedの脅威
indeedが国内の転職市場を大きく変える脅威性を持っているのは皆さんご存知でしょうか?
実はすでにindeedは国内トップのセッション数(訪問数)を誇っています。
indeedの月間セッション数を100とすると、同じアグリケーション型求人検索エンジンであるスタンバイは7.4、国内最大のネット求人広告であるDODAは76.9と既に日本で一番転職希望者を集客しているメディアになっています。
これまでの転職のフローでは
キーワードを検索→求人サイトにいく→求人サイトから情報を手に入れる
というものが一般的でした。しかし、indeedが現在、圧倒的求人数・求職者数を抱えていることから検索上位に組み込むことは容易に想像できます。
そうなると、これでのフローが
キーワードを検索→indeedが上位表示→求人サイトにいく→求人サイトのフローになります。

つまり既存のリクルーティングビジネスにとってindeedはビジネス競合でありながら、リクルーティングビジネスの生命線を握る存在になりつつあります。だからこそ、indeedによって業界の構造が大きく変わりうる可能性があるのです。
③リクルーティングビジネスの未来シナリオ

・リクルーティングビジネスの方向性
□企業ニーズ
企業がリクルーティングサービスを選ぶ際のニーズとしては
「自社にとって優秀な社員を安く、手間なく、採用したい」に尽きるかと思います。
現状のサービスとしては、
求人広告は母集団形成から始め選考を進めていくスタイルですが、採用工数の多さと費用対効果の低さが否めません。
人材紹介に関しては成果報酬型でコストが高いという懸念点が残っています。
今後のニーズとしては、「手間なく、安く」採用できるサービスが人材業界のシェアを奪うのではないかと思います。
□求職者ニーズ
求職者ニーズとしては大きく分けて下の3つに分かれます。
①自己キャリアの方向性に関する情報収集
→転職は非日常のイベントなので、経験豊富な人はなかなかおらず、相談したいニーズは強いと言えます。しかし、キャリア面談と言いつつも言所は転職前提になってしまっている課題があります。その課題を解決するべく、現在は友人紹介のようなリファラルリクルーティングが注目されています。
②企業・案件探し
→転職の方向性が定まった人には企業・案件探しのニーズはかなり高いです。
現在は求人とOpenWorkを照らし合わせて情報取集をしている人が多くなってきています。
③転職支援
→実際に行きたい企業が決まってから内定をもらうまでの支援の厚さも重要な観点です。
以上3つを満たせているエージェントが求職者の利用価値が高いサービスになります。
・人材業界の今後
改めて、これからの人材業界の中で生き残るサービスはやはり
「自社にとって優秀な社員を安く、手間なく、採用したい」これに尽きます。
ただ、マーケットとして直近では伸びるものの、長期スパンで見ると縮小していくでしょう。
そのような環境下の中で、人材業界における発展とは、人材流動化が当たり前になり、多くの人が変化に対応して、常に新しいチャレンジをしていくことで、成長産業を支援することや、ワクワク働く人を増やすことなのではないのでしょうか??
僕なりの感想と考察
これからindeedのようなアグリケーション型求人検索エンジンによって、リクルートが転職顕在層のパイを獲得していくのは明らかです。そこで他の会社が生き残っていくためには特に以下の二点が重要だなと考えました。
①いかに転職潜在層に対してのパイを獲得できるか
WantedlyやLinkedInのようなソーシャルリクルーティングサービスによる潜在層から顕在層へのコンバージョンがカギになりそうです。
今後の課題感としては、
・潜在層の中でも企業が欲しい人材に適切にアプローチできているか
・企業側が年収面など、いかにすべての情報をオープンに出来るか
この2つが解消できればより潜在層からマッチ度の高い求職者が発見できるはずです。
(安直ではありますがご了承ください。)
②いかに企業にとっての優秀な人材を集められるか
ハイクラス転職などのレイヤーに着目した時に、部長や役員クラスの転職に関しては今後大きな動きは出なさそうです。企業の方向性を変える人材がそもそもこれから伸びるソーシャルリクルーティングやアグリケーション型求人広告から流入することは考えにくいからです。
故に、これから変わるビジネスモデルの中で着目すべきは「ミドルクラス以下の人材」です。
その中からいかに企業にとって優秀な人材の集団を形成できるかが鍵になってきます。
僕が個人的に思ったのは、「若手のハイパフォーマー転職」とか需要ありそうだなと思いました。
めっちゃ本を読んでからのアイディアベースですが。笑
まず登録時にある程度の優秀層しか登録できないようにスクリーニングをかけ、それによってよりマッチ度の高い会社の発掘の作業工数を企業視点から見ると減らせるのではないかと思います。
③求職者への提供価値
①、②は企業視点から見ていましたが、利用してくれる求職者がいなければそもそもビジネスとして成り立ちません。
情報収集/企業探し/転職支援の3拍子を揃えるのが鍵になりそうです。
人材業界のこれまでの動向とこれからの動向を知ることによって、自分がこれから入る人材業界でどのような視点でビジネスをすれば良いかぼんやりと僕は掴めた気がしたので、人材業界志望の就活生の方にはぜひ読んでもらいたいです。
ではまた!

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